自業自得

マッキーとの動物園デートから一週間。

 

サークルの部屋にいけばマッキーから好き好き光線を注がれ、こころちゃんは浮かれていた。

 

「これこれ♡好かれるってたまらない♡」

 

そんな事を思いながらも

 

もちろんそんな性格の悪さを悟られまいと、のんちゃんは気づかないフリで必死だった。

 

マッキーの告白はサークル内であっとゆうまに広がり

 

友達にどうするの?と聞かれれば

 

「えーっと…まだよく分からないし…うーん…」

 

と、そもそも男の人が苦手、という設定で、困ったフリをしていた。

 

でも、もちろんこころちゃんは浮かれまくっていて、

 

アッキーが席を外すだけで

 

「好きな人が告白された話なんて、聞いてられないよね♡

ふふ、ヤキモチやいて♡やいて♡」

 

と、訳の分からない妄想をして喜んでいた。

 

そんな自分勝手な妄想からもう1週間たった頃だっただろうか

 

事件が起きた。

 

 

 

 

 

アッキーに、彼女ができた。

 

 

 

 

もともとアッキーのファンは多く

 

アッキー目当てでサークルに入った子もたくさんいた。

 

色んな子からアプローチはされていた。

 

知ってはいたが、私はなぜか好かれている自信があり

 

アプローチするどころか、ヤキモチを妬かせようと必死に行動していた。

 

それに反して、アッキーの心を射止めた彼女は

 

毎日のようにきちんと自分の気持ちを伝えていたらしい。

 

最初から、勝負は見えていたようなものだった。

 

 

 

 

そして、心の整理がつかないまま

 

アッキーと2人になる機会があった。

 

ただただ気まずかった。

 

でも、何も話さないのも不自然だし…

 

そもそも、私は告白したわけじゃないから、フラれた訳でもないし、セーフセーフ!

 

と、変な理由で自分を納得させ、

 

ついに

 

「アッキー、彼女できたんですってね!おめでとうございます!!

海で、ディズニー行こって言われて、楽しみにしてたから、ちょっと残念です~笑」

 

と、おめでとうと言いつつも、ちょっとだけ残念な気持ちも笑いを交えて伝えてみた。

 

すると、アッキーから

 

「ありがとね。

マッキーと動物園いくって聞いて、俺あきらめたんよ。」

 

 

 

 

…え?

 

待って待って。

 

私が好きなのはアッキーよ?

 

アッキーのために、風太くんの相談したり

 

わざとマッキーと動物園行ったりしたのよ?

 

なのに…両想いだったのに、私のせいでこんなことになったってこと?

 

私は混乱した。

 

 

 

 

 

 

「アッキーに告白されたい♡」と、必死になっていたこころちゃんを

 

のんちゃんは、何てなぐさめたら良いのか分からなかった。

 

こころちゃんに悪気はない。

 

だからこそ結果は残酷だった。

 

なのに、当時、人からの評価は絶対だった私は

 

フラれるなんてダサい、恥ずかしい、人からバカにされるみたいで嫌だと思っていたので

 

結局、悲しみは見せず、平気なフリをした。

 

泣くこともできなかった。

 

きちんと、本当は好きだったことを伝えることもできなかった。

 

 

 

 

 

今なら思う。

 

誰かを好きになることって、恥ずかしいことじゃない。

 

フラれることも、恥ずかしいことじゃない。

 

もっと自分の気持ちに正直になって

 

きちんと周りに表現して

 

相談したり、相談されたりしておけばよかった。

 

そうすることで、友達との関係も構築されていくものだし

 

自分自身のことも客観的に見れるようになるんだと思う。

 

私は今でも自分の本当の気持ちは言えないし、

 

そもそも自分の好きな事、やりたい事すら分からない。

 

今思い返しても、自業自得なんだと、落ち込むことしかできない。

動物園

マッキーからのお誘いから1週間後、私は動物園にデートに行った。

 

私の中ではけっこう延ばした方だった。

 

この1週間で、マッキーからアッキーへ恋の相談をし、

 

アッキーが焦る、という狙い。

 

なんなら、アッキーから「行くなよ」と言われるのを少し期待していた。

 

もちろん、何もなかった。

 

 

 

動物園の当日。

 

久しぶりの男の人とのおでかけに、私は少し緊張していた。

 

当たり前のようにエスコートしてくれて、

 

何を買うにもおごってくれて、

 

高校生の頃とは違い、大人のデートをしている気がした。

 

マッキーの、女の扱いに慣れた感じも、案外心地よかった。

 

 

 

こころちゃんはこの雰囲気に酔ってしまい

「もうマッキーと付き合っちゃえばいいんじゃない?!」

 

のんちゃんは

「いやいや、私の最終目標はアッキーだし!」

 

と2人は葛藤していた。

 

ただ言えるのは、動物園デートは案外楽しかった。

 

行くまでは、アッキーのことで頭がいっぱいだったのに

 

かわいい動物たちと、マッキーの大人な対応に

 

私はずっと笑っていた。

 

 

 

そして帰り。

 

マッキーから

「分かってると思うけど、好きになってまった。付き合って。」

 

 

 

突然だった。

 

いや、突然ではなかった。

 

確かにマッキーの気持ちをなんとなく察していた。

 

ただ、その気持ちを利用することしか考えてなかったから

 

言ってほしくなかった…とのんちゃんは落胆した。

 

マッキーは続けて

「すぐに返事はいらないから。」と言い

 

のんちゃんは

やった!少し伸ばして、アッキーにまた相談しよう!

と考えた。

 

「でも俺、気は長くないからね」と言われ

 

こころちゃんはもうマッキーでよくない?!と焦った。

 

 

 

この日はこれでいったん帰ることにしたが

 

告白されてうれしい!

でもアッキー狙いなんだよな…

でもマッキーもかっこいいし、優しいし、ありかな…

いやいや、それこそ軽い女にみられる!

でも今日1日楽しかったぞ?

でもアッキーが…

 

など、のんちゃんとこころちゃんの会議が始まり

 

色々な意味で疲れる1日となった。

 

そして、この1日が私の運命を変えるきっかけとなってしまった。

アッキー&マッキー

風太くんについての相談会を開いて数日。

 

アッキーとはサークルで顔を合わせながら

 

個人的にLINEのやりとりもしていた。

 

「この間はありがとうございました」

 

「いいよ~あれからどう?」

 

風太くんにはまだ会えてなくて…」

 

「早く言った方がいいよ~」

 

「そうですね…なんかこーゆうの慣れてなくて…」

 

「そっかぁ~でも大丈夫だから言ってきな~」

 

「なんか、断るのもつらいですね…」

 

みて分かる通り、…が異常に多い病み系LINE。

 

被害者面して、同情をかおうとしているのが見え見えの会話。

 

それでも私は、少しでもLINEを長く伸ばせるように

 

中身のない会話を続けていた。

 

アッキーが私を気にかけてくれるのがうれしかったし

 

なんでもいいからアッキーとつながっていられるのがうれしかった。

 

そんな時、同じBIGサークルのマッキーから連絡があった。

 

 

 

マッキーは、おちゃらけ系の先輩で、みんなのムードメーカー的存在だった。

 

いつも明るくて、ポジティブで、笑わせてくれる先輩。

 

顔はかわいい系で高身長。

 

アッキーと仲が良く

 

アッキー&マッキーといえば、大学内でも有名な存在だった。

 

 

 

そんなマッキーから突然のLINE。

 

「今度、一緒に動物園いかない~??(^▽^)」

 

突然のことで驚いた。

 

なんで?

 

急に?

 

2人で?

 

え、これなんて返すべき?

 

ひとしきり驚いたあと、こころちゃんはニヤリとした。

 

アッキーとマッキーはとっても仲が良い。

 

このLINEのやりとりも、マッキーからアッキーへ伝わる可能性もある。

 

早くしないとマッキーにとられちゃうよ、と焦らせることができる。

 

実際、少しLINEのやり取りをしてみたところ

 

どうやらマッキーは私に気があるみたいだ。

 

この頃のんちゃんは、もうこころちゃんの好きにしたらいいよ~

 

となげやり気味で、止めることもしなかった。

 

私はこころちゃんの思惑通り、マッキーと動物園に行くことにした。

風太くん

大学に入学して2ヶ月。

 

私は浮かれていた。

 

外見はそこそこ美人枠なので

 

大学に入ったとたんに色んな男性から声をかけられた。

 

もちろんただの浮わついたナンパや

 

サークル勧誘のための声かけもあったが

 

中には本当に告白されたものもあった。

 

頻度にして1週間に1回。

 

色んな人から告白された。

 

のんちゃんは

「出会ってすぐ告白してくるなんて、外見しか見てないの?」

と、すぐに告白してくる神経が信じられなかった。

 

こころちゃんは

「さすが私♡モテモテ~♡」と浮かれ

まるで大学にいる全員が私に興味があるような素振りをみせていた。

 

私はのんちゃんの意見に賛成し

 

すぐに付き合うようなことはしなかったが

 

こころちゃんの浮かれっぷりにも賛同し

 

どうせならこのままモテ記録をつくってしまおうと

 

色んな人にいい顔をして、色んな人からちやほやされていた。

 

 

 

その中に、風太くんという男の子がいた。

 

言い方は悪いが、見た目は冴えない感じ。

 

THE男子高生といった雰囲気で

 

女の人と付き合ったことないんだろうな、と勝手に想像していた。

 

風太くんとは、何かのサークルの新歓コンパで知り合い

 

すぐに連絡先を聞かれ、交換した。

 

何度かLINEのやり取りをして

 

すぐに告白をされた。

 

付き合う気はなかったけど、

 

こころちゃんから

「どうせなら、もうちょっとちやほやされたい!」

と要望があり

 

『出会ったばかりで風太くんのことよく知らないし、そんな目で見たことないから、今はよく分からない』

 

断りつつもその気がないわけじゃない、という返事をした。

 

いわゆるキープ。

 

当然、もう少し仲を深めよう!と、更なるアプローチがあった。

 

それは私が仕向けたようなもの。

 

なのにこころちゃんは

「これをアッキーに相談して、アッキーとの仲を深めよう!」

と、恐ろしいことを考えていた。

 

 

 

アッキーに、相談したいことがある、と連絡をしたら

 

すぐにご飯に行こう、という話になった。

 

相談内容は

・出会ってすぐに告白されてしまう

・断っても誘われて、困っている

・私って軽い女に見えるのかな…

 

ポイントは

・色んな男性からアプローチがあるとアピールし、私の価値をあげる

・でも私はすぐに人を好きになるような子じゃないと分かってもらう

・軽い女に見られて傷ついている。私は軽くないのに…と分かってもらう

 

こころちゃんの作戦は完ぺき。

 

これで、この子はいい子だ!と分かってもらえて

 

しかも色んな男の人に狙われてるなら早く告白しないと!と焦らせることができる。

 

アッキーとの距離は縮まり、アッキーと付き合うことができる!

 

そんな作戦だった。

 

 

 

2人でご飯はミニスカートにちょっと胸元のあいたTシャツ。

 

食欲のないフリをしながら、あっさり系のパスタを注文し

 

フォークの手を止めては一点をみつめ、話をしようと深呼吸。

 

でもやっぱり勇気がない、と肩を下ろしてご飯を食べて

 

話そうとして深呼吸

 

肩を下ろしてご飯を食べて

 

話そうとして

 

ご飯を食べて

 

そんな演技を一通りすませた後

 

言いにくそうに話をし始めた。

 

「実は、最近告白してくる人が多くて…」

 

「もちろん、告白してくれるのは嬉しいんだけど…」

 

「出会って間もないのにそんなこと言われると

この人外見しか見てないのかな?

私って軽く見えるのかな?

って心配になって…」

 

「ねぇ、私って、軽い女に見えますか?」

 

こんなこと言われたらNOと言うしかない。

 

アッキーには誘導尋問のような相談会が始まった。

 

もちろんNOと言ってくれ、私はほっと笑顔になった。

 

「よかった…アッキーにまでそんな風に見られてなくて…」

 

「中には、断っても連絡とか、ご飯に誘ってくる人もいて、

私、どうしたらいいのか…」

 

ここまでは簡単だった。

 

こころちゃんの考えたシナリオ通りにセリフを並べるだけだった。

 

しかし、ここからだった。

 

アッキーは

 

「自分はどうしたいの?」と尋ねてきた。

 

え…

 

「嫌なら断るしかないよ」

 

 

「付き合う気がないなら、ハッキリ言いなよ」

 

 

 

こころちゃんのシナリオだと

 

「モテるんやね~」って焦ってくれて

「でもその人たちの気持ち分かるわ~」って同意してくれて

なんなら俺も好き、くらいのことが伝わってきて

「またいつでも相談して!」って次につながるはずだった。

 

完全に、客観的な意見を述べてくれる相談会になった。

 

困った。

 

どうしたい、って言われても

 

どうもしたくない。

 

このちやほやを楽しんでいて

 

それに便乗して相談という名のご飯に行きたかっただけ。

 

こちらのペースに戻そうとしたがうまくできず

 

焦らせるはずが、私が焦る会となった。

 

結局、もちろんアッキーといい感じにはならず

 

とにかくこの腹黒がばれないように振るまうので精一杯だった。

 

予想外の受け答えとなったため

 

演技ではなくフォークの手はとまり

 

パスタはみるみるカチカチに固まって、食べられなくなってしまった。

 

 

 

かけひきなんて、するもんじゃない。

 

私の想いを、私の言葉で伝えなきゃダメだった。

 

1人の人と付き合いたいなら

 

1人の人しか見ちゃダメだった。

 

それでも私はまだアッキーを諦められなかった。

 

帰り際の「またね」という一言に望みをかけ

 

こころちゃんは次なる作戦を考えていた。

春の海

BIGサークルに入って最初のイベントは

 

お弁当をもって春の海に行こう!だった。

 

みんなそれぞれ1品ずつおかずを作り

 

お弁当を分け合う仕組み。

 

女にとっては女子力を披露するバトルのようなシステム。

 

手の込んだものを作ってくる人

 

とにかく量で勝負する人

 

ハナから受け狙いの品を作ってくる人

 

色々いた。

 

私は、何を作ったのか忘れた。

 

たぶん、かぼちゃの煮付けだったと思う。

 

 

お昼もすんで自由行動。

 

みんなまだ冷たい海に足をつけに走る中

 

私はなんとなく疲れてしまい、堤防沿いに座っていた。

 

そこに、アッキーが「隣いいかな?」と座ってきた。

 

隣というには近すぎる距離。

 

話をするときも、こちらの顔を覗き込むように話す仕草が

 

余計に私をドキドキさせた。

 

こころちゃんは舞い上がり、

私のこと好きなのかな?!やったぁ!大学デビュー!

 

のんちゃんは

なんだか急に距離を詰めてくる人だな…

と混乱しつつも、悪い気はしていなかった。

 

なにより2人とも、

 

「このイケメンなら付き合っても恥ずかしくない」

「みんなが憧れてるアッキーが自分に興味をもっている」

と、変な優越感にひたっていた。

 

色々な話をする中で、ディズニーの話がでた。

 

そしてアッキーから「ディズニー行こうか?」とのお声がかかった。

 

こころちゃんはテンションマックスで

こんなにスムーズに話が進むなんて!と浮かれていた

 

しかしのんちゃんは

この人軽すぎる。怪しい人なのかな?

と少し警戒していた。

 

私は2人にはさまれて返事に困っていると

 

遠くからアッキーを呼ぶ声がして

 

そのままアッキーはみんなの輪に入って行ってしまった。

 

2人の時間はそれだけだった。

 

でも、私にとっては特別な時間だった。

 

返事に困ったものの、ディズニーに誘われたことはうれしかった。

 

このままアッキーとうまくいくといいな、と密かに願っていた。

 

でも、みんなからちやほやされたいこころちゃんは

せっかく大学に入ったのだから、他の男も見てみたい。

アッキーも少し焦らして、なかなか手に入らない女を演じよう。

など、余計なことを企んでいた。

 

ひとめぼれ

BIGは基本オタクの集まりのようなサークル。

 

しかし、その中に1人

 

気になる人がいた。

 

ロック調の服装にサングラス

 

スレンダーな体で笑うと素敵な笑顔

 

悪そうな格好なのに

 

優しさがあふれ出ている。

 

BIGには似つかわしくない

 

誰がみてもかっこいいという人だった。

 

こころちゃんは、すぐに目が♡になり

 

のんちゃんは、なんでここにいるの?とその人を知りたいと思った。

 

私も、ひとめぼれ、だったんだと思う。

 

みんなからアッキーと呼ばれていたその人は

 

私にも優しく声をかけてくれた。

 

すぐにLINEの交換をした。

 

この時期誰とでもLINEの交換をしたし

 

アッキーも特に意味はなかっただろう。

 

それでも、すごくうれしくて、特別なIDだった。

キャラの模索

色々言い訳をならべて、やっと入れたボランティアサークル。

 

名前はBIG。

 

ボランティアなんちゃらなんちゃらの略だよ~と教えてもらったが

 

忘れてしまった。

 

(ボランティアってVじゃん!って突っ込むのがお決まりらしい)

 

このころから私の立ち位置というか、キャラをどうしたらいいのか分からなくなっていた。

 

幼いころから人の顔色をうかがってきたので

 

人に合わせることは得意だけど

 

自分を表現することは苦手だった。

 

のんちゃんも基本は「あなたに合わせます!」というスタンスだし

 

こころちゃんに関しては「好きになってくれるなら、あなたの好きなものを好きになります!」と、まぁ好かれることに必死だった。

 

好きなもの。

 

やりたいこと。

 

どう感じるか。

 

ここらへんの質問は聞かれると困ってしまって

 

なにかな~ってつまらない答えか

 

無難に優等生みたいな返事しかできなかった。

 

さらに言えば、『自分らしさ』が確立してないから、すぐに人に影響される体質だった。

 

BIGには色々な先輩がいた。

 

すごく明るくて、いつもニコニコ、頑張り屋さんな、でもちょっとぶりっ子な先輩。

 

見るからにロック好きで、クールで、女にも男にも目上の人にもはっきり者を言う先輩。

 

お笑い大好きで、男からも女扱いされないけど、周りにはいつも人であふれている先輩。

 

挙げだしたらキリがないくらい、色々な人がいた。

 

さて、私は混乱した。

 

私は何キャラになればいいんだ?

 

基本的にのんちゃんが空気を読み、私は求められるキャラを演じていた。

 

嫌われないために。

 

浮かないために。

 

必要とされるために。

 

ぶりっ子先輩と話すときは、私も声をワントーンあげて

 

「そんなことないですぅ~」ときゃっきゃっと話す。

 

いわゆる合コンでのモテテクを凝縮したような女の子になる。

 

クール先輩を話すときは、白黒ハッキリしていないと気持ちが悪いといわんばかりに

 

「まじでないわ。」などはっきり言うようになる。

 

無駄な人は切るくらいの勢いで、ブラックな面を前面にだす。

 

おもしろ先輩と話すときは、急にあぐらをかいたりして

 

手をたたきながら笑い、ノリのいい子になる。

 

とにかく『自分』がなく、人に合わせてばかりだから

 

さぁ、みんな大集合した時に困ってしまう。

 

BIGはその活動内容のためが、会議のように集合する機会が多く

 

その場で意見を言わなくてはいけない機会も多かった。

 

ぶりっ子先輩の目を気にすれば、「学校全体をよくしたい!」などと、ちょっと感情的になりながら、正解ではないのに正論で言い返せないような大きすぎる目標を掲げるのが正解だし

 

クール先輩の目を気にすれば、「無駄は切り捨てよう」と、夢より現実。感情より実績を大事にするのが正解だし

 

おもしろ先輩の目を気にすれば、「え~みんなが楽しければそれでよくな~い?」と、まずは楽しむこと!結果はあと!という考え方が正解だし

 

実際にはもっともっとたくさんの目があり

 

誰の目を1番にして振るまえば良いのか分からなかった。

 

今までは『先生』『親』など、誰に従えば良いのかはっきりしていたけど

 

『先輩』の中に優劣があるわけでもなく

 

その先輩も、その人を良く思う人、悪く思う人がいて

 

『この人は絶対』という対象がいなかったことが余計に混乱した。

 

私はみんなに好かれたかった。

 

この先輩すごいな~と思っても

 

その人のことをあまり良く言わない人が1人でもいたら

 

もう、憧れの対象として良いのか、ついて行って良いのか分からなくなった。

 

みんなに好かれることはない。

 

言葉としては理解していても

 

それでも陰で「あーゆうとこ嫌だよね」と言われることが怖かった。

 

結局、キャラ模索はずっと続き

 

『嫌われない程度のみんなに合わせるキャラ』くらいでずっとふわふわしていた。

 

ただ、合わせるのも楽なわけじゃない。

 

ぶりっ子を演じれば、「ありえんわー」と思っていたし

 

クールを演じれば、「もうちょっと感情的になってもいいんじゃないか」と思っていたし

 

おもしろを演じれば、「いやいや、これキャラ違う!」って思っていたし

 

こころちゃんも毎日その違和感と戦っていた。

 

なんでこんなに頑張るの?

 

嫌われたくないから。

 

しかし、日に日にその思いは変な方向にいってしまい

 

嫌われたくない=好かれたい=みんなに好かれたい

 

と思うようになった。

 

私は、黙っていれば目立つ方だ。

 

大学に入って、何人かに声をかけられ、

 

何人かに告白され、わりとモテ街道を歩いていた。

 

しかし、それはちはるも同じだった。

 

キレイな顔立ちで、ノリも良い。友達もすぐできる性格。

 

モテて当然だ。

 

しかし、その時のこころちゃんは

 

「私こんなにキャラ合わせに頑張ってるのに、ちはるは素のままでモテてずるい!」

 

と思うようになってしまっていた。

 

BIGの中でも私たちは目立っていて

 

かわいい系の私か、かっこいい系のちはるか

 

など2分化されていた。

 

それがこころちゃんを余計にイライラさせた。

 

「こんなに合わせてるんだよ?!望むならあなた好みになるよ?!なんでちはるを見るの?!」

 

と嫉妬でもない、競争心でもない、

 

ただの自分のワガママで、そんな風に考えるようになってしまった。