キャラの模索
色々言い訳をならべて、やっと入れたボランティアサークル。
名前はBIG。
ボランティアなんちゃらなんちゃらの略だよ~と教えてもらったが
忘れてしまった。
(ボランティアってVじゃん!って突っ込むのがお決まりらしい)
このころから私の立ち位置というか、キャラをどうしたらいいのか分からなくなっていた。
幼いころから人の顔色をうかがってきたので
人に合わせることは得意だけど
自分を表現することは苦手だった。
のんちゃんも基本は「あなたに合わせます!」というスタンスだし
こころちゃんに関しては「好きになってくれるなら、あなたの好きなものを好きになります!」と、まぁ好かれることに必死だった。
好きなもの。
やりたいこと。
どう感じるか。
ここらへんの質問は聞かれると困ってしまって
なにかな~ってつまらない答えか
無難に優等生みたいな返事しかできなかった。
さらに言えば、『自分らしさ』が確立してないから、すぐに人に影響される体質だった。
BIGには色々な先輩がいた。
すごく明るくて、いつもニコニコ、頑張り屋さんな、でもちょっとぶりっ子な先輩。
見るからにロック好きで、クールで、女にも男にも目上の人にもはっきり者を言う先輩。
お笑い大好きで、男からも女扱いされないけど、周りにはいつも人であふれている先輩。
挙げだしたらキリがないくらい、色々な人がいた。
さて、私は混乱した。
私は何キャラになればいいんだ?
基本的にのんちゃんが空気を読み、私は求められるキャラを演じていた。
嫌われないために。
浮かないために。
必要とされるために。
ぶりっ子先輩と話すときは、私も声をワントーンあげて
「そんなことないですぅ~」ときゃっきゃっと話す。
いわゆる合コンでのモテテクを凝縮したような女の子になる。
クール先輩を話すときは、白黒ハッキリしていないと気持ちが悪いといわんばかりに
「まじでないわ。」などはっきり言うようになる。
無駄な人は切るくらいの勢いで、ブラックな面を前面にだす。
おもしろ先輩と話すときは、急にあぐらをかいたりして
手をたたきながら笑い、ノリのいい子になる。
とにかく『自分』がなく、人に合わせてばかりだから
さぁ、みんな大集合した時に困ってしまう。
BIGはその活動内容のためが、会議のように集合する機会が多く
その場で意見を言わなくてはいけない機会も多かった。
ぶりっ子先輩の目を気にすれば、「学校全体をよくしたい!」などと、ちょっと感情的になりながら、正解ではないのに正論で言い返せないような大きすぎる目標を掲げるのが正解だし
クール先輩の目を気にすれば、「無駄は切り捨てよう」と、夢より現実。感情より実績を大事にするのが正解だし
おもしろ先輩の目を気にすれば、「え~みんなが楽しければそれでよくな~い?」と、まずは楽しむこと!結果はあと!という考え方が正解だし
実際にはもっともっとたくさんの目があり
誰の目を1番にして振るまえば良いのか分からなかった。
今までは『先生』『親』など、誰に従えば良いのかはっきりしていたけど
『先輩』の中に優劣があるわけでもなく
その先輩も、その人を良く思う人、悪く思う人がいて
『この人は絶対』という対象がいなかったことが余計に混乱した。
私はみんなに好かれたかった。
この先輩すごいな~と思っても
その人のことをあまり良く言わない人が1人でもいたら
もう、憧れの対象として良いのか、ついて行って良いのか分からなくなった。
みんなに好かれることはない。
言葉としては理解していても
それでも陰で「あーゆうとこ嫌だよね」と言われることが怖かった。
結局、キャラ模索はずっと続き
『嫌われない程度のみんなに合わせるキャラ』くらいでずっとふわふわしていた。
ただ、合わせるのも楽なわけじゃない。
ぶりっ子を演じれば、「ありえんわー」と思っていたし
クールを演じれば、「もうちょっと感情的になってもいいんじゃないか」と思っていたし
おもしろを演じれば、「いやいや、これキャラ違う!」って思っていたし
こころちゃんも毎日その違和感と戦っていた。
なんでこんなに頑張るの?
嫌われたくないから。
しかし、日に日にその思いは変な方向にいってしまい
嫌われたくない=好かれたい=みんなに好かれたい
と思うようになった。
私は、黙っていれば目立つ方だ。
大学に入って、何人かに声をかけられ、
何人かに告白され、わりとモテ街道を歩いていた。
しかし、それはちはるも同じだった。
キレイな顔立ちで、ノリも良い。友達もすぐできる性格。
モテて当然だ。
しかし、その時のこころちゃんは
「私こんなにキャラ合わせに頑張ってるのに、ちはるは素のままでモテてずるい!」
と思うようになってしまっていた。
BIGの中でも私たちは目立っていて
かわいい系の私か、かっこいい系のちはるか
など2分化されていた。
それがこころちゃんを余計にイライラさせた。
「こんなに合わせてるんだよ?!望むならあなた好みになるよ?!なんでちはるを見るの?!」
と嫉妬でもない、競争心でもない、
ただの自分のワガママで、そんな風に考えるようになってしまった。